「西フランク王国の建築家」のルール拡張と感想

「西フランク王国の建築家」のルール拡張と感想

家族で遊んでいるボードゲーム「西フランク王国の建築家」のルールを拡張し、ハウスルールとしてプレイした感想を記録として残す。

このゲームの本来の醍醐味は、ワーカーを配置して資源を取る手番の繰り返しが非常にスピード感のあるものになっているため、まるでスピードレースでもしているのかと思わせる状況において、無駄なアクションを一切省いた最高効率な動きができるかを競い合うものである。故に、プレイヤー間のインタラクションは少なくゲームは淡々と進行することが多い。我が家ではゲーム中に一喜一憂したり喜怒哀楽したりと楽しく盛り上がれることを優先しているので、今回思い切って大幅にゲームシステムの改造をしてみた。これは「西フランク王国の建築家」をファミリーゲーム化しようという試みである。よって、現実の事象を忠実にルール化し史実の再現を追体験するものでは全くない。

今回、ルール拡張で取り入れたメカニクスは以下のものとなる。

・カタンでお馴染みのダイスロールによって判定する保有資源のバースト
・役職の選択によってその役職のアクションを全員が行うプエルトリコ方式のドラフト

ルール拡張の内容

・ルール拡張部分以外の項目は基本ルールに準ずる。

・建物カードの山札の一番上にあるカードは常に内容が見えるように表向きにされる。

・個人ボード上の倉庫に保管できる資源の上限はないが、バースト処理の際に8個以上の資源を保有していた場合は資源の半数(端数切り上げ)を捨てなければならない。

・プレイヤーは公開した建物カードの上に資源コマを置き、建築中であることを示す。建築中の建物カードの上に置いてある資源は使用済の資源として扱い、保有資源とはみなされない。建物が完成したらカードの上の資源は共通サプライへ戻すこと。

・手札に持っておける建物カードには建築中の建物カードも含まれる。

・”村長”(スタートプレイヤー)カードを実装し、ラウンドのはじめに行われるバーストチェックとスタートプレイヤーを順番で交代させることができるようにした。

・スタートプレイヤーが自分の手番のはじめにダイスで2d6を行い、地域の情勢が不確定要素で動くようにした。出目の合計が6以下なら闇市場の商品カードが更新される。8以上なら集会所の建物カードが更新される。7ならプレイヤー全員の保有資源のバーストチェックを行う。これは、ワーカー配置数によるセットコレクション的な資源取得とそれに伴う大量保管に対するリスクとしてバーストのメカニクスを実装した。

・役職カードの選択によってその役職のアクションを全員が行う方式に変更した
基本ルールではメインボード上の好きなエリアに自分のワーカーを配置できたが、役職カードに対応したエリアにしかワーカーを置くことができないようにした。加えて、手番プレイヤーが選んだ役職カードのアクションを全員が行う形式でゲームは進むので、自分の思い通りに事を進めることはより難しくなりプレイヤー間のインタラクションは劇的に向上した。

ゲームの進行手順

ゲームの準備
 基本ルールに則る
 建物カードの山札の一番上のカードは常に内容が見えるように表向きにされる
 ”村長”カードと役職カードの計7枚を用意しメインボードの横に配置する
 6面体ダイス2個を用意しメインボードの横に配置する
ゲームスタート
 スタートプレイヤーは”村長”カードを受け取る
 ゲームは、スタートプレイヤーから始めて常に時計回りの順番で進む
ラウンドの開始
 スタートプレイヤーは「地域の動勢」フェイズを実行する
 各プレイヤーの手番(プレイヤーターン)
  ・「役職の選択とアクション」フェイズを実行する
  ・次のプレイヤーに手番を移す
 全プレイヤーが「役職の選択とアクション」を終了したら
  ・取り残った役職カードの上に銀貨を1枚ずつ乗せる
  ・各プレイヤーが持つ全ての役職カードを元の位置に戻す
  ・”村長”(スタートプレイヤー)カードを時計回りで隣のプレイヤーに渡す
  ・次のラウンドを開始する
ゲームの終了
 ギルドホールの枠の規定数が労働者コマで全て埋まると、残りプレイヤーが1手番ずつ行ってゲーム終了となる
 最後に、基本ルールに準じて「最終得点計算」を行い、順位と優勝者を決める

「地域の動勢」フェイズ

 ”村長”(スタートプレイヤー)は6面体ダイスを2個振って、出目によって「闇市場の商品入れ替え」「倉庫の襲撃(バースト)」「設計図の商品入れ替え」に対応する処理を行う。

2d6の結果

  • 6以下・・・闇市場の小市場カード(左)の山の一番上のカードを裏返し、大市場(右)の上に置く。裏返すカードが残っていない場合、大市場から全てのカードを取り、シャッフルした後裏返して、新たな小市場の山とする。
  • 7・・・・・プレイヤー全員の「保有資源のバースト処理」を実行する
  • 8以上・・・集会所の建物カードの山札の一番上のカードを裏向きにして一番下へ移動させ、一番上のカードを裏返して表向きにする。

「保有資源のバースト処理」

個人ボード上の倉庫に保管できる資源の保有上限はないが、バースト処理の際に8個以上の資源を保有していた場合は資源の半数(端数切り上げ)を捨てなければならない。ただし、建築中の建物カードの上に置いてある資源は使用済の資源として扱い、保有資源とはみなされない。どの資源を捨てる(共通サプライへ戻す)かは、プレイヤーが自分で選択して良い。

「役職の選択とアクション」フェイズ

手番プレイヤーは、場に置かれている残った役職カードの中から1枚を選び受け取らなければならない。手番プレイヤーが役職カードを選択すると、手番プレイヤーを先頭に時計回りで全プレイヤーが同じアクションを行うことができる。この時、カードを選択したプレイヤーだけが役職の特典を得る。このフェイズでは各プレイヤーはアクションをパスすることも可能である。ただし、パスした場合はアクションを実行したとはみなされない(特典は得られない)。

役職の種類と特典とアクション内容
1、建築家・・建築を行う
      特典:アクション終了後に+3銀貨を得る
      アクション:ギルドホールで労働者を3個まで配置可能

2、衛兵・・・労働者を拘束する
      特典:合計で共通サプライへの支払い-2銀貨分、免除される
      アクション:中央広場で労働者を5個まで配置可能

3、後援者・・王へ資源を献上する
      特典:アクション終了後に追加で+1美徳を得る
      アクション:王室倉庫で労働者を5個まで配置可能

4、商人・・・弟子または設計図の入手
      特典:アクション終了後に追加で建物カード2枚得る
      アクション:集会所で労働者を1個まで配置可能

5、看守・・・刑務所での利便行為
      特典:合計で共通サプライへの支払い-3銀貨分、免除される
      アクション:守衛所で労働者を5個まで配置可能

6、交易人・・資源の入手
      特典:アクション終了後に入手した資源と同じものを選んでもう1個得る
      アクション:「上記の5箇所以外の全ての場所」で労働者を5個まで配置可能


感想

以上のルールを用いて家族でテストプレイをしてみた。結果は、プエルトリコ方式の役職カードの導入で濃いインタラクションを楽しめた。プレイ時間は3人で1時間半程度だった。家族で楽しめるようにファミリーゲーム化しているので、ゲーム中は資金や資源がカツカツになるような調整はしていない。アクションをするほど加算されていく方式なのでプレイ中の気分は楽である。

意外だったのは、プレイ中はかなりのんびりとした雰囲気でゲームが進行しながらも展開が思ったより早いので、短いプレイ時間でも”プレイした感”を十分味わえたことだろうか。これは、基本ルールによるハイスピードゲームの印象があるので、プエルトリコ式に変更したことでのんびりとした感覚を感じたのだと思う。しかし、カードのアクションでワーカーを一度に5個まで配置できる(1回に5アクションできる)ので、ゲームの展開は非常に早い。20個のワーカーを5個ずつ配置していけば、あっという間に使い切ってしまうので、次の手番で拘束や回収するための「衛兵」カードや「看守」カードを取りたいと全員が考えるようになる。だが、いつ、誰がカードを選択するのかと手番を時計回りに進行するルールによって、自分の手番のタイミングによっては利益を得たり手痛い損失を受けることもある。基本ルールではワーカー配置の最適化とそれに対する拘束による妨害、それを見越しての対処法を用いた最適化戦法に焦点が当てられてしまうが、このハウスルールでは他プレイヤーがとった行動の影響が自分の行動にも大きく影響してくるため、直接攻撃こそないが濃厚なインタラクションを味わえる。毎ラウンド、十分に考えどころがあるゲームになっているのではないだろうか。

さて、今回追加したゲームメカニクスはバーストとドラフトの2つだけだが、これはプレイ時間によって絞られた結果となる。これ以前のルールでは様々なメカニクスを実装してみたのだが、無駄に時間がかかってしまって我が家では不評だった。例えば、兵隊コマを購入して完成した建物カードの奪い合いの戦争をしてみたり、自作のロンデルの上をプレイヤーコマがくるくると回ってみたりと色々やってみたのだが、どうしても目標の1〜2時間のプレイ時間を超えてしまう。そのような事情で削りに削った結果のハウスルールなのだが小粒に纏まっていて気に入っている。このゲームは基本ルールでもそうだが、このハウスルールでもギスギスした感触はないので、プレイ中は家族で冗談を言いながらのんびりとゲームを楽しむことができると思う。役職カードによって全員が同じアクションを順番で行うため、子どもの手番で迷っているときは親がアドバイスをすることもできる。このようなことから、名作「プエルトリコ」で使われているこのドラフトのメカニクスは、半協力的な方法としてゲームをすることもできるので、家族ゲームの中で用いられた場合でも効果が高い。とても素晴らしいメカニクスだということが実感できた。



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