PACIFIC GOをテストプレイする

PACIFIC GOをテストプレイする


はじめに

第2次世界大戦の太平洋戦争を扱ったボードゲーム「PACIFIC GO」を購入した。ルールブックを一読したが、ゲーム進行と展開のイメージがいまいちよく分からなかったので、小学生の息子と一緒にテストプレイをしてみた。ちなみに、今回のゲームにおける作戦の方針はIAB戦略を採用した。この戦略の良いところは準備時間の大幅な節約が実現できることだ。つまり、IAB(行き当たりばったり)戦略とは、作戦計画の立案なしでミッションに挑むということである。

ゲームの準備

ルールブックの説明に沿って盤面を準備する。このゲームでは、ディスク(円盤)駒が海軍兵力、キューブ(四角)駒は陸軍兵力を表す。色は白が日本軍、黒がアメリカ軍、緑がイギリス軍、黄がオランダ軍を表している。一般的なウォーゲームと比べると、駒に兵科記号や数値などの細かい情報はない。1駒は1戦力というアバウトな設定なのだが、小学校低学年の子どもと一緒にゲームをする場合は、これくらいの表現がちょうど良い。

写真1:PACIFIC GOの初期配置図

写真1の盤面を見ると、白の日本軍は東はトラックまで、南は仏印(フレンチインドシナ)まで侵攻していることが分かる。一方の連合軍は、黒のアメリカ軍は東方のハワイ、緑のイギリス軍は南方のシンガポールとビルマ、黄色のオランダ軍は南方のバタビヤに兵力を配置している。ゲームが開始されると、海域(海エリア)や陸地・島嶼[トウショ](陸エリア)の支配を得るために、双方の軍隊が戦闘を行うことになる。当初の目的は、日本軍は南方にある資源を得られる重要拠点(シンガポール、バリクパパン、バタビヤの3つの陸エリア)を何としても占領したい。連合軍はこの資源エリアを奪われないよう守るか、奪われた後は日本への資源の輸送に必要な海路(連絡線)を分断することになるだろう。その後は、ゲーム終了時の勝利条件を満たすために、初期設定で”星印が付いた相手支配のエリア”を自軍の支配となるようエリアの陣取りが争われる。ちなみに、盤面に記された初期設定では、海エリアの支配状況は国旗のマークで表されていて、陸エリアの支配状況はエリアが赤色で塗られていれば日本軍、青色なら連合軍となっている。

写真2:ゲーム開始時の資源チャートの状態

このゲームは駒の移動も戦闘も失われた駒の補充もすべて資源ポイントを消費して行われるということで、資源(リソース)のマネジメントがキーポイントとなる。ターン毎の資源の獲得(補充)がなければ、日本軍はあっという間に何も出来なくなってしまう。よって、日本軍は南方の資源エリアの支配が何としても重要になってくる。資源エリア1か所支配につき3ポイントの資源獲得なので、初期設定では本土の2か所と満州の計3か所で毎ターン9ポイントとなる。南方の3か所を含めてすべての資源エリアを支配すると6か所で18ポイントの獲得となる。日本軍は駒1つにつき移動も戦闘も1資源ずつ消費していくので、実際には毎ターン18ポイントでも足りないくらいだ。一方のアメリカ軍は盤面の資源エリアに関係なくターン毎の資源の獲得ポイントが決められている。写真2を見ると、1ターン目の資源の獲得が5ポイント、2ターン目が10ポイント、3~6ターン目が20ポイント、7~9ターン目が30ポイントになっているのが分かる。初期資源ポイントは日本軍は20ポイント、アメリカ軍は0ポイント、イギリス軍(オランダ軍含む)は4ポイントとなっている。アメリカ軍は1ターン目は資源ポイントがないので移動も戦闘もできない。本格的に動けるのは4ターン目からとなるだろうか。ゲームは全10ターンなので、アメリカ軍はゲーム中ほぼ半分である前半の間は大した動きができない。後半に一気に巻き返すのがプレイイメージとなる。

さて、この記事を読んでいる人のための事前情報として、ゲーム開始時の状況とゲーム展開のパターンの一例を簡単に解説したが、実際のテストプレイ時の私はルールブックの理解も不十分だったので、ここまでの把握もできていない状況だった。次はゲームの進行に移るが、かなりいい加減なプレイとなっていることを事前に述べておく。

ゲームの進行

おおまかなゲームの進行状況と、その時気づいたことなどを記録していく。
今回のゲームは、日本軍は私で連合軍は子どもの担当となった。

ゲームの手順は以下のようになっている。
1.増援フェイズ
2.移動フェイズ
3.戦闘フェイズ
3-1.海上戦闘セグメント
3-2.陸上戦闘セグメント
4資源獲得フェイズ
5生産フェイズ
6帰還フェイズ

先攻後攻の順番は、「各ターンの開始時に港湾エリアを7ヵ所以上持っている陣営が
先攻となります。」となっている。初めてなのでどこが港湾エリアなのか分からず、毎回駒をどかして確かめて数えるのが大変だった。これは別紙のチャートを自作で用意しようと思う。

第1ターン

移動フェイズはチェスや将棋のように1駒ずつ交互に動かす方式になっていて、一つの駒は1ターンに1回だけ動かすことができる。とりあえず、日本軍の私は勝手が良く分からないまま、トラックエリアにいる海軍駒を中部太平洋とマーシャル諸島へ1駒ずつ移動させ、海エリアの支配を目指す。何をしたいのか私自身分かっていない。台湾にいた海軍駒2個と陸軍駒2個を南シナ海へ移動させる。仏印の陸軍駒2個を隣のタイへ移動させた。これで資源14を消費して残り6となる。連合軍の子どもはほぼ何もできないのでビルマのイギリス陸軍1個をタイへ移動させて終わる。

戦闘フェイズに移行し、タイにて陸軍の戦闘が行われる。双方1駒に1資源ずつ割り当てる。1d6(6面体を1回振る)して1なら1回命中なのだが、双方外れて膠着となる。日本軍は資源2使用したので残りが4となった。

たったこれだけの行動に対する資源の消費の多さにようやく気づき、背筋に寒気が走る。

資源獲得フェイズで、日本軍は本土と満州の資源エリア3か所*3で9ポイントを獲得(補充)し、資源ポイントが計13ポイントになった。

帰還フェイズにて双方共に海軍駒と、戦闘をしていない陸軍駒が全て最寄りの自軍港湾エリア(基地)へ戻る。南シナ海へ移動した海軍駒と陸軍駒の計4駒が何もしないまま無駄に資源を8消費し、港湾エリアのマニラへ戻った(実は、これは私のミスで、マニラは初期青色エリアなので連合軍支配であった。ゲーム終了まで気づかず使用してしまっていた)。この時初めて、「駒の移動は単なる移動ではなく、何らかの作戦の実行のために基地から出撃したものである。よって、作戦が終了したら(ターン終了までに)基地へ帰還せねばならない」というメカニクスであることを理解した。なぜ陸軍駒が海を歩くのか理解できなかったが、輸送船に乗って移動しているわけである。チェスの駒の1歩移動とは異なり、ターンの初めに基地から出撃し移動と戦闘をして帰還する(基地で補給と整備を行う)という流れをゲームの手順を使って表現していることが分かった。

第2~4ターン

私も子どもも四苦八苦しながら、駒の移動と戦闘を行う。なぜ、海軍駒は輸送船に乗った陸軍駒を攻撃することができないのか(敵の貧弱な輸送船を艦隊の火力をもって海上で撃破したい)。この辺も感覚的に理解しにくかったのだが、ターンを重ねるごとに何となく考え方に慣れてきた。

このゲームでは、輸送船に乗った陸軍駒は敵支配の海エリアに侵入してそこから敵支配の陸エリアへ上陸することはできないルールとなっている。敵の陸エリアへ上陸したければ、陸上戦闘セグメントの前までにその海エリアの支配を自軍のものにしておかなければならない。その他にも、敵支配の海エリアに侵入したら移動はそこで停止しなければならず、ターンの最後には自軍基地へ帰還するか隣接する自軍支配の陸エリアへ上陸しなければならないので、敵支配の海エリアを突破することはできないようになっている。つまり、陸軍駒が敵支配海エリアに侵入しても、できる行動がない。よって、輸送船に乗った陸軍駒は安全な自軍支配の海エリア内を移動するものなのであって、単独で敵支配の海エリアに侵入するものではないという考え方であることが分かる。

では、海軍駒がなぜ輸送船に乗った陸軍駒を攻撃できないのか。このゲームにおける海軍駒の役割は”海域(海エリア)の支配をすること”だけという考え方なのだろう。なので、海エリアの支配の邪魔をする敵の海軍駒とだけは戦闘ができるようになっている。このことから、敵支配の海エリアに侵入して輸送船に乗った陸軍駒を撃破しようと考えても、そこでまず先にやる海軍駒の仕事は”その海エリアの支配の確立”なのであり、これによりこのターンの作戦行動が終わってしまうというイメージなのだと思われる。

こんな感じで、ルールブックを片手に実際にプレイをすることで、少しずつゲームの流れが分かってきた。第4ターンにはビスマルク諸島にて日米初の海戦が行われ、日本軍のダイスの出目が良くアメリカ艦隊が撃沈される。これを見た子どもが、とても悔しがる。

写真3:初の海戦は日本軍の勝利

第5~7ターン

アメリカ軍の資源ポイントが十分に補充されて、子どもが一気に攻勢をしかけてくる。日本軍は南方のシンガポールとバリクパパンを支配して資源エリアを合計5か所占領し、毎ターン資源15獲得まで頑張ったが、どうしても残りのバタビヤのイギリス軍の抵抗が激しく落とすことができない。ここに苦戦しているうちにアメリカ軍はハワイを拠点に次々と西進し広大な太平洋をほぼ支配することに成功。第7ターンには、バタビヤの戦いにてイギリス軍が粘りの強さを見せ日本軍を蹴散らした。部隊を補充(生産)する資源の余裕がない日本軍はバタビヤ攻略への兵力をこれ以上回せず、攻略作戦はここで失敗となった。

写真4:バタビヤの戦いはイギリス軍が勝利した

第8ターン

子どもはアメリカ艦隊を東シナ海と日本海へ侵入させる。実は、日本軍はこの海エリアの支配を失うと、満州及び南方の資源エリアと本土との連絡線(補給線)が分断されるため、毎ターンの資源の獲得ができなくなるといった非常に困った事態に陥る。急いで本土の呉に残る1海軍駒を派遣して対応するが、戦闘時に追加資源のメガ盛りをされて撃沈。あっという間に支配を奪われる。これによって連絡線が断たれ、日本軍の資源の獲得は毎ターン6ポイントへと減少した。

<連絡線と補給切れについて>
自軍の補給源(日本軍なら横須賀と呉の各エリア)から駒のいるエリアまで自軍支配エリアが繋がっていない場合は、補給切れとなるのだが、これは駒ごとに毎回ルートを確認しなければならず、慣れない状態での作業は大変だった。何か分かりやすい確認方法があるか考える必要がある。
注意事項
・補給切れの駒が戦闘を行う場合は、消費する資源ポイントが2倍必要になる(端数切捨て)。
・補給切れの状態で敗北した場合は、そのエリアに自軍の駒が残っていても全滅となり、駒をすべて予備ボックスへ移さなければならない。

第9ターン

アメリカ軍の大艦隊が日本本土へ向けて侵攻する。日本海軍の最後の2艦隊が迎え撃つが圧倒的戦力の前に全滅。遂に、本土へ上陸されて横須賀エリアはアメリカ軍の支配となる。喜ぶ、子ども。

写真5:アメリカ軍の侵攻

第10ターン(最終ターン)

子どもは盤面の海エリアの国旗(支配マーク)をすべてアメリカ国旗に変えたいと考えたようで、艦隊を日本本土から離れて残った日本軍支配の海域へ攻め入り始めた。これにより盤面の海域(海エリア)がすべてアメリカ国旗に塗り替えられたところでゲーム終了となった。それを見て大喜びする、子ども。

写真6:ゲーム終了時の状況

勝利条件の確認

ゲーム終了後に獲得VPを確認すると連合軍は11点、日本軍は0点となった。勝敗判定では、連合軍から日本軍のVPを差し引き、その結果が10点以上なら連合軍の勝利で、それ以外なら日本軍の勝利となる。今回は11点なので子どもの勝ちとなった。しかしながら、これだけ盤面をアメリカ国旗で埋め尽くされても僅か2点差で辛くも連合国の勝利となった判定には驚いた。今回はVP獲得を前提とした行動をお互いが全くしていなかったのでこのような形となったが、本来はVP獲得のために星印が付いた相手支配の陸エリアをできるだけ多く占領して支配し、星の数で優劣を決めることになる。なので、海エリアを一生懸命支配しても一切のVPが付かないのだが、子どもには満点の結果なのだろう。もちろん、私も子どもの気分を満足させたことで個人的な勝利ポイントを獲得し、今回は両者で勝利を分かち合う形になったということにしようと思う。

ゲームプレイ後の感想

ゲームを1回プレイしてようやくゲーム進行や展開をイメージすることができるようになった。プレイ感としては、日本軍は資源が足りないが連合軍は時間(ターン)が足りないことが分かる。そのため、どこを攻めるか何を放棄するかの取り捨て戦略をして上手くやりくりするのが肝になるのだろう。以下に今回の日本軍プレイでの反省点をいくつか列記する。

・序盤は最初から南方の資源エリアへ進軍して早期占領を目指す。

・敵の移動を停止させるには敵の移動経路上へ相手より1手早く自軍の海軍駒を置くべきであり、どの順番で駒を動かすのかをよく考えなければならない。

・4ターン目からのアメリカ軍の攻勢が始まった時に、できるだけ侵攻を遅らせる戦法を考える必要がある。これができないと最終的に全エリアを占領されてしまう可能性が高い。

・自軍の支配陸上エリアを最終的にどこまで放棄して相手のVP獲得を許すのかの数パターンの防衛ラインの計画が必要だ。

・一方で作戦がある程度うまくいくことを想定して、敵のどこの陸上エリアを狙ってVPを獲得していくのかの数パターンの攻勢計画が必要だ。

・逆に連合国側の立場だとどのような攻防の作戦を立てるのかの検討も必要である。


最後に、PACIFIC GOはウォーゲームのような二人対戦用ボードゲームとして、とても良くできたゲームだ。双方それぞれの戦法を見抜いたり対処したりと、ウォーゲームの入門用としてプレイするにもちょうど良い。一方、ウォーゲームとしてみれば、ルールがシンプルでプレイ時間が短く済むのが大変素晴らしい。アナログゲームを使った子どもの頭の体操について考えている人には、十分に使える作品であるとおすすめできる。


リンク

堀場工房:デザイナーの堀場 わたる(Wataru Horiba)氏のブログ

GameMarket:PACIFIC GO

PACIFIC GO:日本語ルールブックPDF

ボドゲーマー:PACIFIC GO

boardgamegeek(BGG):Pacific Go

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